○ 小規模太陽光発電製作の道標 ○


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【1. 概要】

    講座に先立って、システムの概要と大事な点を整理しておきます。

    1) まず、電力会社の網、つまり壁のコンセントには繋がない独立系であること。

      ※ 繋ぐには既得利権団体へ大金を貢ぐ必要があります。

    2) コストとの兼ね合いで多少のリスクは発生しますが、予めご了承ください。

      ※ リスクについては都度詳しく説明をする予定です。

    3) 初級編ということで、50W以下のLED照明(複数可)で経験値を積みましょう。

      ※ http://panasonic.jp/everleds/lamp/lineup/26mm.html ←こんなの

    4) 安全については法に準拠した設計をしますが、工事は資格が必要です。

      ※ 資格不要の配線をする予定です。本格的に工事をする際はご相談ください。

    5) あくまでも個人的な趣味の実験の域を出ないことを大前提とします。

      ※ 大人の事情をご理解ください。

    5) この記事は長崎のsiteまつをに集う有志向けに投稿したもののまとめです。

      ※ 安易に真似をして怪我や火事を起こしても私は責任を負いません。



【2. 必要な物品】

    今回はこれがないとお話にならない、物品について簡単に説明します。場合によってはこれがそのまま購入品になるでしょう。

    1) 太陽電池(ソーラーパネル)

    発電機だと覚えておいてください。さまざまな種類があり、システムに応じて正しく選定しないと本来の能力が発揮できなかったり、宝の持ち腐れ状態になります。太陽の方向に真っ直ぐ向いた時が一番良く発電できます。でも温度が上がると効率が落ちる性質があるので、真夏に効率が落ちるジレンマを抱えています。

    2) 蓄電池(二次電池)

    充電により電気を蓄えておける入れ物です。これも多種類で選定に困ります。必要なコストとシステムの寿命を決定する大きな要因です。今回は自動車用の「鉛蓄電池」を使います。予算が許せば「ディープサイクル」と呼ばれる使いやすくて長寿命のものを選定されても結構です。

    3) 充放電制御器

    蓄電池に太陽電池からの電気を溜めたり(充電)、蓄電池の電気を使ったり(放電)する時に、電気が勝手にあっちに行ったりこっちに流れたりしないようにする機器です。高級品はタイマー機能があったり、過放電で蓄電池にダメージを与える前に自動的に遮断したり、切替えたりする機能を持つものがありますが、今回は安価かつ最低限の機能を持つものを使います。

    4) インバータ

    太陽電池で発電して、蓄電池に溜めた電気は直流(DCと表記)です。一方家庭用の電化製品は交流(ACと表記)なので、そのままでは使えません。直流を交流に変換する装置がインバータです。これもピンキリですが、今回は照明用途なので最も安価なもので済ませます。ピンは正弦波(SIN波)と呼ばれる家庭の交流電源と同等の電気を出力できます。キリは矩形波で、中間的な擬似正弦波というのもあります。

    5) 配線材料・工具・その他材料

    上記の機器間を繋ぐためには当然電線が必要です。今回は私の手持ちの電線(同軸ケーブル)をお分けしても良いのですが、端末処理に多少技術が必要ですので、不器用を自認する方は、家庭内配線に使用されている比較的安価で入手性の良いVVF電線を使用されるのをお勧めします。

    電線と電線、端子、コネクタなどを接続するための接続材料が必要です。少量多品種が必要で、ホームセンター等で買うと非常に割高ですので今回は共同購入しましょう。他に熱収縮チューブや結索タイなども使用します。

    場合によってはハンダ付けが必要かもしれません。その場合はハンダゴテとハンダが必要ですが、無ければ無いで別の手法を考えますし、この際なので買い揃えるのも良いと思います。電線の被覆をむく「ストリッパー」があると便利です。ピンきりですが安いものでも役に立ちます。接続端子を使って電線と何かを接続する時に、圧着レンチが必要です。これも安価なもので何とかなります。その他ドライバやニッパーなどは一般的なもので結構です。



【3. 電池の容量考察】

    システムを設計するという行為からは真逆ですが、価格と入手性の良い自動車用の鉛蓄電池を使った場合に、どれほどの負荷で、どれくらいの時間使えるかを考察してみます。

    バッテリーは「40B19R(L)」で考えてみます。メーカーの資料には、この形式は5時間掛けて放電した場合に、1時間あたり 28A の電流が取り出せます。と記載されています。

    でもこの電力を全部取り出してしまうと電池は空になります。どうせ充電するんでしょ? だったらいいじゃん、というわけにはゆきません。何故ならばこの自動車用バッテリーは普段、ほぼ満充電状態で使うのを前提とされて作られているので、全部放電(深い放電と言います)するのを繰り返すと、最悪は数回で死んでしまうのです。

    なので、死なない程度にちょっとずつ使うといった使い方をします。これを利用深度と呼び、今回は 20% とします。値段が10倍以上のディープサイクル電池を使えば 50% 位は行けるということを覚えておいてください。

    もうひとつ悔しいことに無駄になる部分があり、それが直流を交流に変換するときの効率で、これがひどいことに約2割の損失です。損失分のほとんどは熱となって空気中に放たれます。

    ここで一度計算します。元の容量が 28Ah(アンペア・アワー)でしたので、これに深度と効率を乗じます。 28Ah×0.2×0.8=4.48Ah 4.48アンペアを1時間流せる事がわかりました。

    次に負荷の計算をします。PanasonicのLED電球で一番明るい11Wタイプで考えてみます。求めたいのは電流です。11Wの電力を家庭用と同じ交流100Vで得るためには次の計算で求められます。 11W÷100V=0.11A 電球が光り続ける限り 0.11A の電流が必要だとわかりました。 ※厳密には力率を考慮すべきですが、ここでは省きます。

    最後にどれほどの時間使えるかを計算します。これは簡単ですね。単純に割れば良いのです。 4.48Ah÷0.11A=40.7h となります。

    つまり、満充電の自動車用バッテリーからインバータを経由して、PanasonicのLED電球を光らせると約40時間使えるわけです。なかなか使えそうな気がしてきましたね。でもそうは問屋がおろしません(笑)



【4. 太陽電池の選定】

    いよいよメインの太陽電池パネルの選定ですが、これまた逆説的に価格第一で探してみます。性能で上を見ればきりがないので、値頃感のあるずばり一万円で買えるもの。

    http://www.ymt7.net/SHOP/MS-P-30W.html

    まずは電気的定格を見てみましょう。
    ・多結晶シリコンタイプ
    ・定格出力:30W
    ・開放電圧:約21.6V
    ・短絡電流:約1.83A
    ・最大動作電圧:約17.28V
    ・最大動作電流:約1.74A

    最大動作電圧と最大動作電流の積が最大出力なので、17.28V×1.74A = 30.0672W となり、これは定格出力にほぼ等しいことがわかります。でもこの数字が真の実力値ではないのです。ここにも発電損失というものがあり、およそ 15% が一般的です。なので、実際の出力は、30.0672W×0.85 = 22.557W となります。

    次に一日あたりの発電量を考えてみます。日本の平均的な日照時間は一日あたり3.3時間と言われていますので、これを掛けてみましょう。22.557W×3.3h = 84.339Wh となりました。これが一日の発電量ですが、実際には季節や天候、もちろん地域ごとに違うので一応の目安です。

    それでは前項のバッテリーを、死なない程度に計算通りに放電したと仮定して、今度は今計算した太陽電池を繋いで充電することにします。一体どれほどの時間が必要なのでしょうか? 電池に充電する量が 4.48Ah で、一日の発電量が 84.34Wh です。なんか楽勝な感じですが、それぞれの単位が違いますね、どうしましょう?

    とりあえず何も考えずに単位を合わせてみます。後々で便利なように、電力を表す[W]に統一します。電池の定格電圧は12Vなので、W = V × A より、4.48Ah×12V = 53.76Wh が求められました。これで計算ができます。

    ここで単純に喜んではいけません。それは相手が天候というひどく不確かなものだからです。計算しやすいように、日々使う電力量を 50Wh と仮定します。同じように日々の充電能力を 80Wh とします。毎日晴れの日だと何も問題ありませんが、晴れ曇り雨曇り晴れ曇り曇り雨なんて一週間はざらです。

    考え方を一日から一週間ベースに変えてみます。使う電力は 350Wh で、上記の天気だとざっと適当に計算して 250Wh 程度だとすると、足りませんね。これが現実です。問屋さんは毎日晴天を卸(約束)してくれないのです。

    さてどうしましょう。てるてる坊主をぶら下げて天に祈りましょうか。いやいや、答えはものすごく簡単です。無いものは無いのでスッパリと諦めるのです。それが嫌ならば財布と相談してこんなのを買いましょう。今回はコスト最優先の設計思想なのです。

    http://www.natural-sky.net/solar-panel-sharp-nq134lw.html

     

    まとめます。

    一万円で買える30Wの太陽電池で、一週間で発電できる量は 250Wh 程度です。LED電球(11W)であれば連続22時間使えます。2灯でも11時間。以上から、週末に使用するだけなら充分なスペックだけど、毎日使うには少々頼りないシステムであるということがわかりました。でも、毎日30Wh強を使えるとすれば、携帯電話やデジカメやエネループの充電分は余裕でまかなえることになります。防犯灯なんかにも最適です。何よりも自己満足がえられます。だけど電気代換算はしちゃいけませんよ。がっかりすること請け合いですから。



【5. 充放電制御器】

    発電担当と蓄電担当が決まったところで、両者を安全に無駄なく使うための制御器が必要です。これもコスト重視かつ、やや機能も欲張りたい目線で探してみました。欲しい機能は次のとおりです。

    1) 充電制御

    発電量がたっぷりあるときには、しっかり充電しつつ、バッテリーを監視して、過充電はしないようにすること。満充電に近づくとトリクル充電という電池に優しい方法や、段階的に充電量を考慮した方法に切り替えること。

    2) 放電制御

    バッテリーの中身を全部絞りとってしまうと、バッテリーが死んでしまうので、それを防ぐために放電時に電圧を監視して、これ以上使っちゃダメと、自動的に放電を遮断してくれること。できるなら遮断電圧(放電終止電圧)を自由に設定できると嬉しい。

    3) 表示機能

    バッテリーの電圧や充電電流を知りたくなるのは人間の性です。テスターを使ったり、電圧計と電流計を予め取り付けておけば良いのですが、コストに跳ね返ります。なので、コントローラーに表示機能があると嬉しいものです。以上の条件をすべて満たす制御器がズバリこれです。

    http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-02824/

    電子工作マニア御用達の秋月電子で売っているので、入手性も問題ありませんし、何より安いのが魅力です。



【6. 費用積み上げ】

    お待たせしました。本題です(笑)

    1) 太陽電池パネル   \10,500 送料込み

    2) バッテリー      \3,000 その辺で購入

    3) 充放電制御器     \6,500 送料込み

    4) インバータ      \2,000 その辺で購入

    この他に、パネル設置用のステー類、バッテリーと制御器を収める防水コンテナ、バッテリーターミナル、ヒュージブルリンク、圧着端子、熱収縮チューブ、室内用の配線、使用する照明機器が必要です。おおよそ一万円くらいはかかるでしょう。

    ここまでで \32,000 です。もちろん手持ちの物があればそれは差し引いてください。

    オプション的な考えとして、太陽電池を安い 50W×3 にすると、ヤフオクで \3,480 なんてのがあるので、プラス3千円くらいで充電容量が大幅アップします。また、バッテリーをディープサイクルにすると、プラス1万5千円で蓄電容量が一桁上がります。以上二つは財布とご相談して各自決定ください。



【7. 設置の注意点】

    執筆中



【8. 】

    執筆中



【9. 】

    執筆中



【10. 】

    執筆中



【11. 】

    執筆中